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耐雷トランスの弱点

耐雷トランスは、建物が直撃雷を受けた場合や建物の電位が30kVを
超過した場合などには、雷の建物内への侵入を許してしまう場合があります。

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従来用いられてきた典型的な耐雷トランスの接続図とその仕様を以下に示します。


単相用回路図
図1 単相用回路図

表 仕様

項目  
耐電圧(一次巻線〜接地〜
二次巻線間)
10k〜30kV
一次側避雷器公称放電電流 100kA(4/10μs)、
20kA(8/20μs)

1.雷サージは配電線からのみ進入するわけではありません。

 雷サージは配電線からのみ進入するわけではありません。建物が直撃雷を受けた場合は設備の接地側から雷サージが進入します。
図2においては当該建物に施工される各種の接地は等電位ボンディングされて大地に対しては一点で接続されていることを前提とします。 (そうでない場合はさらに各接地間に電位差が生じることになります)。ここで建物の接地抵抗を1Ωとし、この建物が100kAの直撃雷を受けた とすると建物の電位は100kVに上昇する。従って耐雷トランスの中の混触防止板及び耐雷トランスのケースも100kVに上昇する。一方この耐 雷トランスの一次巻き線は電源変圧器におけるB種接地により大地に接続され、無限遠点とすればゼロ電位となっている。耐雷トランスの一 次巻き線〜接地間の耐インパルス電圧は30kVであるので、耐雷トランスのケース又は混触防止板から一次巻き線へと絶縁破壊が発生しま す。このような絶縁破壊を防止するために耐雷トランスの一次側P点にSPDLA1が設置されています。このときの直撃雷分流分はIEC規格 による簡易的な分流比の算出法によれば50%なので(残りの50%は大地へと放流する)100kAの直撃雷を受けた場合は50kAとなる。ここで 低圧配電系統が単相2線の場合はSPD1ヶ当たり25kA、単相3線の場合はSPD1ヶ当たり16.7kAが流れます。このときの雷電流波形は 10/350μsとなります。

機器を耐雷トランス保護した場合に建物が直撃雷を受けた場合の雷電流分布
図2 機器を耐雷トランス保護した場合に建物が直撃雷を受けた場合の雷電流分布

 

2.一次側P点のSPDに10/350μs対応のSPDを使用していないことの問題

一次側P点のSPDに10/350μs対応のSPDを使用していないことの問題
4/10μsや8/20μs対応のSPDを使用した場合、そのSPDは10/350μsの電流波形にどこまで耐えられるでしょうか。図3には4/10μsと
8/20μs、10/350μsの波形を波高値100kAで合わせたものです。このグラフは横軸が時間で縦軸が電流なのでこの面積は通過電荷量に相 当します。この通過電荷量にSPDの制限電圧をかければ、雷電流通過時にSPDに注入されるエネルギーが求められる。このエネルギーは熱に変換されるのでSPDの熱的耐量、つまり放電容量決定の際に用いられる重要なファクターです。図3の比較によれば10/350:8/20:4/10=1:25:50となるので例えば4/10μs波形の放電容量100kAのSPDは10/350μs波形を流した場合は2kA相当の放電容量となります。したがってこのSPDは建物が直撃雷を受けた際には破損する可能性があります。


直撃雷と誘導雷の電荷量の比較
図3 直撃雷と誘導雷の電荷量の比較

 

3.耐雷トランスのインパルス耐圧は30kVであるが建物の電位は30kVを超過しないか?

 耐雷トランスのインパルス耐圧は30kVであるが建物の電位は30kVを超過しないか?
図4はIEC規格61024-1Ed.2に示されている雷電流波高値の累積確率分布です。このグラフによれば雷電流波高値30kA以上の雷は全落雷 の60%を占めていることがわかります。もし建物の接地抵抗が1Ωとすれば全落雷の60%では建物の電位は30kV以上となり耐雷トランスの絶縁を脅かします。また耐雷トランス一次側のSPDを動作させ、このSPDを破損されることになります。

雷電流波高値とその発生確率
                         図4 雷電流波高値とその発生確率

 

4. 「耐雷トランスのメリットは建物が直撃雷を受けてもその影響を電源側に及ぼさないことである」といわれているがそれは正しいか?

 「耐雷トランスのメリットは建物が直撃雷を受けてもその影響を電源側に及ぼさないことである」といわれているがそれは正しいか?
3項で述べたように建物の電位が30kVを超えることは十分考えられます。その場合は耐雷トランスの絶縁破壊又は耐雷トランスの一次側 SPDが動作すれば(例えSPDが破損しないとしても)雷電流は電源線へ流入します。

5.もし建物の電位上昇が耐雷トランスのインパルス耐圧以下であった場合の保護はどうだろうか

 もし建物の電位上昇が耐雷トランスのインパルス耐圧以下であった場合の保護はどうだろうか
例えば建物の電位上昇が20kVであった場合、機器のケースも20kVに上昇している。ここで図2を参照すると、この20kVは機器の内部回路と そのケース間のキャパシタンスC1と耐雷トランス二次コイルと混触防止板間のキャパシタンスC2の値の逆比例で分圧されます。ここで一般 的にC1≦C2であるので大部分の電位差はC1に加わり機器が絶縁破壊されます。これを防止するためには機器の入力端子の直前R点に 10/350μs対応SPDを設置する必要があります。なおその場合には直撃雷電流がR点SPDを経由して流入するので、耐雷トランス二次側Q 点のSPDも直撃雷対応にする必要があります。 ここで耐雷トランスの一次側P点に10/350μs対応SPDを設置し、またR点に 10/350μs対応SPDを設置するならば耐雷トランスは不要とな ってしまいます。なおP点とR点のSPD間でエネルギー協調をとればR点のSPDは誘導雷対応(波形は8/20μs)でよいのです。この場合はQ 点のSPDは不要となります。

6.高圧受電の場合はどうだろうか?

 高圧受電の場合、建物の電位が落雷により高圧変圧器のインパルス耐圧を超過した場合には、高圧変圧器の一次側に設置した高圧避
雷器が動作します。この場合高圧系統は非接地系統となっているので高圧避雷器の放電容量が小さくても問題は無いのです。なお受電用 変圧器の二次コイルのB種接地は建物の接地と共用されていて建物と同じ電位となっている。しかし通常高圧受電用トランスは建物の地下 階か屋上階に設置されており、このB種接地点と機器の位置はかなり離れていることが多い。この経路の自己インダクタンスLは1μH/mでv あるので仮に1kA/μsの電流上昇率であったとしても1μH/m×1kA/μs=1kV/mの電圧降下が発生する。ちなみに第二雷撃の電流上昇 率は保護レベルTの場合200kA/μs、保護レベルUの場合150kA/μs、保護レベルV、Wの場合100kA/μsです。つまり建物が直撃雷を受 けた場合にはトランスのB種接地点と機器のD種接地点との間には相当大きな電位差の発生が予想されます。したがって高圧受電の場合 も耐雷トランスの効果には限界があると考えられます。

   
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