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内部雷保護特集コーナー/ギャップ式SPDとバリスタ式サージ防護デバイス(SPD)の比較

ギャップ式SPD(surge protection device)
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とバリスタ式サージ防護デバイス(SPD)の比較
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 ギャップ式SPDは別名雷電流アレスタとも呼ばれ大きな放電エネルギーを処理できる。バリスタ式SPDは別名サージアレスタとも呼ばれ酸化亜鉛素子(Zn0)が使用され大きな放電エネルギーの処理はできないが、過電圧を低減する効果が大きい。以下、簡略化のためギャップ式SPDを単にギャップ式と、またバリスタ式SPDをバリスタ式と呼ぶことにする。

1)放電容量を表示する電流波形の相異(放電容量はサージ電流の波高値で表す。) 

2)過電圧を制限する原理の相異


3)応答時間の差違

4)絶縁試験の場合の相異

5)ギャップ式に2通りある。

1)放電容量を表示する電流波形の相異(放電容量はサージ電流の波高値で表す。)
 ギャップ式は通常10 / 350μsの直撃雷電流波形に対応し、バリスタ式は8 / 20μsの誘導雷電流波形に対応するSPDである。波形10 / 350μsは波頭10 μs波尾350をμs意味し、まず最初に10 μsで波高値に達し、その後、指数関数的に減衰して350μsで波高値の半分の値になることを意味している。その後もこの波尾は継続する。波形8 / 20μs は、 まず最初に8 μsで波高値に達し、その後、指数関数的に減衰して20μsで波高値の半分の値になることを意味している。その後もこの波尾は継続する。


図1 直撃雷と誘導雷の電荷量の比較

 ところで図1は両者の波高値を100 kA(注:実際には誘導雷の場合には、このように大きな電流が流れることはなく、その波高値で5〜10 kA程度であるが両者の性能比較のために波高値を100 kAに合わせた。)に合わせて比較している。横軸は時間を示し縦軸は電流を示しているので、この曲線と横軸で囲まれる面積As=CはSPDを通過する電荷量に相当する。この場合、直撃雷(10 / 350μs)の場合は約50 C(クーロン)であり誘導雷(8 / 20μs)の場合は2 Cにすぎない。その比率は25 倍である。(注:図では時間軸は約400 μsまでしか表示していないが、面積計算は2000μsまで、即ち縦軸の電流がほぼ零となる時点まで計算してある。)なおSPDの端子電圧が、その動作中はほぼ一定(制限電圧)と仮定すれば、この電圧と通過電荷量を掛け合わしたものはSPDに対するエネルギー注入量になり、これがSPDの素子(バリスタの場合はZn0)に熱的ストレスを与えることになり、これが過大となるとSPDは焼損し、短絡事故を引き起こす。
結論としてギャップ式とバリスタ式の波高値が等しい場合に・・・
直撃雷(10 / 350μs)の電荷=25×誘導雷(8 / 20μs)の電荷
の関係がある。ちなみに、バリスタ式の放電容量が100 kA(8 / 20μs)と表示してあっても、これに直撃雷電流の分流分(10 / 350μs)を通電する場合は4 kA(10 / 350μs)
にすぎないということになる。一般にバリスタ式の放電容量は大きいものでも20 kA(8 / 20μs)であり、これを直撃雷用に通過電荷量により置き換えると0.8 kA(10 / 350μs)
となり、これではとてもバリスタ式でギャップ式を代替することはできない。
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2)過電圧を制限する原理の相異
 それでは、どうしてこのようにギャップ式とバリスタ式に通過電荷耐量の差が生ずるのであろうか。それは過電圧を制限する原理に依存する。
 ギャップ式は過電圧が侵入して、その波頭がギャップの閃絡電圧に達すると、火花閃絡からアークへと移行しギャップ式の端子電圧は数10Vの低いアーク電圧となる。いわば開閉器のスイッチング動作に近似している。なおこのアーク電圧は電流が増加すれば、さらに低減する。この場合のSPDの動作開始電圧はギャップの火花閃絡電圧に等しく、またSPDの制限電圧(保護レベル)とも等しい。
図2参照のこと。


図2 ギャップ式SPD動作時の電圧の変化



図3 ギャップ式SPD動作中のサージ電流〜電圧特性

 図3はギャップ式SPDが動作する場合の電圧電流特性を示す。この図の電流波形Iは10/350μsである。電圧波形Uの特長は閃絡電圧は、かなり高いが一旦アークに移行するとアーク電圧は非常に低く、IとUの積は電力であり、SPDへのエネルギー注入量は比較的低く抑制される。こらがギャップ式が大きな通過電荷耐量を有する理由である。



図4 バリスタ素子の電流〜電圧特性

 図4はバリスタ(この場合はZnO)の電流〜電圧特性を示す。通電電流1 mAのところで電圧が段階的に急上昇するところがあり、その後、電流が増大しても電圧は比較的一定となる。この特性が過電圧の制限に利用されている。しかし半導体は言い換えれば半抵抗でもあり、このタイプのSPDの場合は抵抗が接続されたままとなっていると同様であり、抵抗電圧降下として、かなり高い端子電圧が現れる。図4では約700 Vとなっている。
この端子電圧は電流増加に従って増加する。ギャップ式の場合のようなスイッチング動作は認められない。


 図5がバリスタ式の電流電圧特性を示している。ギャップ式の電圧電流特性である図3と比較して端子電圧が700 Vとかなり高い値を示している。電流と電圧の積は図3に比較すれば、遙かに大きくSPDへのエネルギー注入量も遙かに大きい。これは熱に変換され、過大な場合はバリスタの焼損短絡を誘発する。


図5 バリスタ式SPD動作中のサージ電流〜電圧特性
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3)応答時間の差違
 一般にバリスタ式の場合、電流1mAのところを動作開始点としているが、実用上は数100 A〜数10 kAの範囲での特性が問題となるわけであるから、この動作開始点は実用上は意味がない。即ち1 mAを動作開始時点とする応答時間がいくら短くても、過電圧を制限する性能には何の影響も与えない。前項で述べたようにバリスタ式ではスイッチング動作が無く、半抵抗が接続されたままの状態となっていると考えれば、むしろ動作開始点は無いと考えた方が実際的である。制限電圧は応答時間ではなく図4 バリスタ素子の電流〜電圧特性 によってのみ定まると考えてよい。
 これに対しギャップ式の場合は侵入する雷過電圧がギャップの閃絡電圧に達した時が動作開始時点(応答時間)となるので、応答時間は侵入過電圧の波頭の上昇率に依存する。
 もしギャップの閃絡電圧を4 kVと仮定し、例えば侵入過電圧の波頭の電圧上昇率を40 kV/μsとすれば、
応答時間は4kV÷40kV/μs=0.1μs=100 nsとなる。
応答時間(Responce time)=100 nsはギャップ式の応答時間の一般的な値である。
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4)絶縁試験の場合の相異
 SPDが接続されている回路の絶縁抵抗を測定する場合の注意事項・・・
バリスタ式の場合は、半抵抗が接続されているのと同様であるから、必ずSPDを回路から断路しておく必要がある。さもないと漏洩電流が流れ回路の絶縁劣化と誤判定してしまう可能性があり、また最悪の場合はSPDを破損してしまう。このような理由でSPDの電源側には分岐線用配線用遮断器を接続しておかなければならない。またこの遮断器はSPDが熱的過負荷により焼損短絡した際にも、SPDを回路から切り離すために必要である。
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5)ギャップ式に2通りある。
ギャップ式には充電線と接地線間に接続する続流遮断性能を持つものと、例えばガス管の絶縁箇所を橋絡する続流遮断性能を持たないものと2通りある。


図6 ギャップ式SPD動作後に続流が流れる状況

 前者の場合は、一旦ギャップが動作し、アークに移行すると、この状態以降では回路の地絡・短絡状態に等しくなる。図6には雷サージ電流がSPDを通過後にSPDの設置点における短絡回路インピーダンスによって定まる商用周波数の短絡電流が流れる状況を示している。これを続流と呼ぶが、この続流は通常はSPD自体で遮断するべきである。従ってギャップ式SPDのギャップには配線用遮断器と同様な遮断機構を備えていなければならない。(もしSPDがそのような遮断機構を持っておらず上位の遮断器により、続流を遮断するとすれば、この遮断器はSPDが動作するごとに再投入しなければならないが、多重雷撃の場合には、この再投入動作は間に合わない。)ギャップ式の続流遮断性能には電流零点消弧するもの、即ち商用周波数電流の半波である16 ms(60Hzの場合)/ 20 ms(50Hzの場合)で遮断する方式のものと、高度な限流性能を持ち数msで遮断を完了するものがある。(この場合には続流は殆ど流れない。)SPD設置点の短絡容量が、SPDの続流遮断性能を超過している場合には、
当然、SPDの電源側に過電流遮断器を接続しSPDをバックアップしなければならない。またこの過電流遮断器は万が一のSPDの故障時にSPD分岐回路の保護を行う。
 続流遮断性能を持っていないギャップ式SPDは、例えばビルの引き込み口においてガス管の絶縁箇所(ガス管がビルの外側で電気防触のために、直流電圧が印加されていれば、このガス管はビル内で等電位ボンディングがとられているので、引き込み口において絶縁しておく必要ある。)の橋絡に使用された場合は、ビルが雷撃によって高電位となった場合にのみギャップ式が動作してガス管の絶縁箇所を橋絡するが、雷サージ電流が通過した後は、絶縁分離されたガス管の両側の部分間の電位差はなくなるので、このSPDには続流は流れない。従って続流遮断性能は必要としない。
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